重要な科目なのに正しい勉強方法を理解している人が少ないのが「現代文の読解」ですね。
どうしてでしょうか?
それは、特に勉強しなくても、そこそこできてしまうからでしょう。
勉強しなくても現代文がある程度できてしまうと、その対策が後回しとなって、その結果、成績が頭打ちになったり、以前は得意だったはずなのに、いつの間にかできなくなってしまって、どうしたらいいのか途方に暮れてしまう、なんてことが起きてしまいがちです。
また理系の生徒さんだって現代文の勉強は疎かにはできません。
国公立の大学を目指すのであれば文系でも理系でも共通テストで国語が必要なのは当然ですが、そうでなくても国語力があるとないのとでは、すべての教科の成績に大きなひらきができてしまうからです。
国語力は勉強のかなめです。つまり現代文の勉強は、すべての勉強の実力を底上げしてくれる可能性を秘めているのです。
ここでは、できるだけシンプルで効果的な現代文の読解方法を紹介します。
この方法はとてもシンプルでわかりやすいので直ぐに実践できます。また国語力も鍛えられるので、すべての勉強に好影響をもたらしてくれるかもしれません。
目次
現代文の読み方は読書とは違う
読書ならば、文章の内容に沿って自分の考えを自由奔放に展開させても構いませんが、現代文の問題を解くためには、それをしてもらっては困ります。
現代文の理解というと、そこに書かれた内容から自分の意見を言えるくらいにならなければいけないと思っているのだとしたらそれは間違いです。
現代文の問題を解くための理解は、そこに書かれている内容を他の人に正確に伝えられる程度のものであれば十分です。自分の認識や意見を挟み込む必要はありません。
つまり、文章の構造を理解し、文や段落がどのようにつながっているのかを論理的に把握する、そして内容を歪めずに理解することができれば現代文の問題は解くことができます。
現代文を読むためには読書が必要?
よく現代文を解くためには読書をたくさん行う必要があると言われます。逆に読書をしなければ現代文は解けないとも言います。
これは、ある点では正解ですが完全に正解ではありません。
文章を読んで、頭の中に自然とイメージの流れを作れるようにするためには、ある程度の読む訓練が必要です。
日頃から読書に親しんでいたり、新聞を読む習慣があれば、当然読む技量は上がりますし語彙も増えます。しかし現代文を解くには、読書とは違った観点があることも確かです。
これは意外かもしれませんが、現代文を解くためには、むしろ数学を勉強した方がいいのではないかと思うときさえあります。つまり論理的な思考が必要なのです。
理系の方が国語の読解力がある?
わたしが生徒さんに現代文を教えているときに気づいたことがあります。
それは、いわゆる文系の子たちよりも理系の子たちの方が現代文の解き方の飲み込みが早いことです。
理系の子たちは数学の証明問題などに代表されるような「論理的思考」に強いので、現代文を勉強していても、あたかも数学の解法と同じ感覚で納得できるのでしょう。
それに反して、文系の子たちは、とかく「センス」で解きたくなってしまうのですね。
現代文を解くには「センス」が必要?
現代文の問題を解くためには「センス」が必要だとよく言います。現代文の「センス」がなければ問題は解けないとも言います。
でもこの「センス」っていったい何なのでしょうね。
現代文が得意な子に「どうして正解できたの?」と聞いたら「なんとなくそう思ったから」で終わってしまうときがあります。
そのような子は、確かに現代文は得意なのですが、正解できた理由を説明できません。
これが皆さんが思っている「センス」というものではないでしょうか。
つまり、現代文ができるのは「センス」があるおかげで「センス」のない人が、いくら現代文の勉強しても解けるようにはならない、というものです。
本当の国語の「センス」って、そのようなものとは別物だと思うのですが、でもここでは上記のようなものを「センス」としておきます。
このセンスですべてが解決していくのであれば、それはそれでいいのですが、現代文をセンスだけで解いてきた子は、勉強を重ねるうちに突然できなくなることも多いのです。
現代文を解くために必要なのは「センス」ではなく「論理的思考」なのです。
国語力とは何か?
現代文を解くために国語力が必要だと言われるのは納得ですね。
でも国語力をつけようと思っても、そもそも国語力が何なのか知らなければ求めようがありません。先ずは国語力の正体を知りましょう。
「聞く力」と「読む力」
相手が話している内容を正確に理解できるのは国語力があるからです。
また新聞の記事に憤りを感じたり、文学作品に感動できるのも国語力のおかげです。
前者を「聞く力」、後者を「読む力」と言います。
「話す力」「書く力」
また、聞いたり見たりした内容を正確に人に伝えることや、それを文章におこすのも国語力があるからです。
前者を「話す力」、後者を「書く力」と呼びます。
つまり国語力とは「読む」「聞く」「書く」「話す」という言語活動能力の総称です。
現代文の問題を解くには、これらのうち「読む力」と「書く力」を使います。
「読む力」より「書く力」
現代文の読解では、インプットするための「読む力」が重要なのは理解できるでしょうが、わたしは、アウトプットするための「書く力」を重視した方が現代文が得意になると思っています。
「書く力」を広義に捉えれば「他人に伝える力」です。もちろん「話す力」もそうでしょう。
他人に伝えるためには、読んだ内容を丸暗記しても意味はなく、どうしても「要約してまとめる」必要があります。
例えば、ホームルームの時間に担任の先生が学校生活のマナーについてお話ししていた内容を、その日欠席した同級生に後で伝える場合、先生の話を丸暗記して伝えたりはしませんよね。「部活が終わったら直ぐに帰れってさ」など一番重要な部分を要約してまとめるはずです。
この「要約してまとめる」力こそ、現代文の理解ばかりでなく、すべての勉強に必要な力なのです。
現代文の具体的な解き方
ここからは現代文の問題を解けるようにようにするための具体的な方法について説明していきます。
① 段落ごとに要約する
段落ごとの要約を考えながら本文を読み進めていきます。
段落の内容がよく飲み込めない場合には、その段落をゆっくりと繰り返して読みましょう。読むのに慣れていないうちは、この繰り返す頻度は多くなりますが、読む力がついてくれば、その頻度は自然と減ってきます。
② 段落と段落の関係を考える
段落の要約ができたら、前の段落と今回の段落の関係をはっきりさせます。
段落と段落との関係には次のようなものがあります。
ここでは、わかりやすく文と文の関係にしてありますが、段落と段落との関係でも基本的に同様です。
よく使う接続詞:「だから」
よく使う接続詞:「しかし」
よく使う接続詞:「また」
よく使う接続詞:「それに対して」
よく使う接続詞:「例えば」
よく使う接続詞:「なぜなら」
よく使う接続詞:「さて」
よく使う接続詞:「しかも」
③ ここまで読んだ複数の段落をつなげる
前後ふたつの段落の関係がわかったら最初に戻り、ここまで読み進めてきたすべての段落の要点をつなげて流れをつかみます。
流れをつかんだら、また新しい段落をひとつ読んで要約し、その前の段落との関係を考えます。それができたら、また最初に戻り、段落のつながりに注意して要約をつなげながら文章の流れをつかみます。これを繰り返していきます。
段落のつながりに沿って自分の視点を動かしていけば、筆者の考えに同調できるようになります。
例えば、「いま読んでいる段落は前の段落と対比になっているな」と気づいて読めば、筆者が比べたいと思っている観点に自然と視点が向かいます。
文章を読んでいて、その文章が、いったい何を言っているのか、さっぱり判らないという人は、文の流れ、つまり筆者の考えの流れについていけていないのが原因です。
段落ごとの要約と、そのつながり方を意識することで筆者の考えの流れが見えてきます。それが見えてくれば、設問の意味もわかり、何を答えればいいのかもわかるようになってきます。
④ つながり方を図にする
これは必須ではありませんが、段落のつながりを図式化できるようになれば文章の全体像が、よりはっきりとしてきます。よく現代文の問題や模試の解説にある、「あれ」ですね。
あの図は、見慣れないと何を意味しているのかわからないのですが、上記の読解方法を実践しているうちに「なるほど」と納得して見られるようになります。
慣れないうちは繰り返しを多用する
段落の要約は慣れないうちは難しいのですが、ひとつの段落をゆっくり繰り返し読んでいけば理解できるようになります。
最初は繰り返す回数が多くなるので嫌になるかもしれませんが、そこで諦めてはいけません。要するに慣れの問題なのです。
この練習は最初のうちはとても時間がかかります。でも、それを続けていくうちに、段落が話の流れの中で、どのような機能を持っているのかがわかるようになります。
現代文の読解のポイントは次の3つです。
- 段落ごとの要約
- 前後の段落のつながり
- 文章全体の段落のつながり
この3つのポイントを常に意識いて文章を読み込んでいけば、最初のうちは苦労しても、そのうち、ただ一回読んだだけでも文章の内容がしっかり把握できるようになります。
この練習を続けていきましょう。そうすれば、現代文は必ず読めるようになります。