英語の入試問題で頻出であるにもかかわらず、学校の授業や参考書では、さらっとでしか押さえられていなくて、つい忘れがちになるものがあります。それが補語です。
補語を必要とする文型は SVC とSVOC ですが、この文型で使われる動詞でよく使われるものはそれほど多くなく、それを補語の役割と共にある程度覚えてしまえば、入試問題を解くときにかなり役に立ちます。
ここでは「補語」の意味と役割、そして実際の問題の対処法まで解説します。さらに英語学習のキーポイントにも触れていきます。それは補語の理解を深めていく過程で得られるのです。
目次
補語とは何にか
「補語」とは何でしょうか?
英語で補語は 「complement」 といい、その意味も「補うもの」ですから補語は何かを補っていると考えてよいでしょう。
それでは、いったい何を補っているのでしょうか。その答えは「主語」または「目的語」となります。
SVC の文型の中の補語
次の英文を見てください。
① My sister is a dentist.
私の姉は歯科医だ
② He is fine.
彼は元気だ
上記の文は、どちらとも SVC の文型です。①の文は名詞の「a dentist」が補語です。また②の文は形容詞の「fine」が補語です。
①の補語である「a dentist」は、主語である「My sister」が、どのような人なのかを説明しています。
また ② の補語である「fine」は、主語である「He」が、どのような状態にあるのかを説明しています。
しかも補語である「a dentist」や「fine」を省略してしまうと、文が成り立たず意味がわからなくなってしまいます。
主語を説明する補語を「主格補語」といいます。主格補語は次のように説明できます。
・「主語」を説明する語
・補語を省略すると文の意味が成り立たない
主格補語は、主語が「どのようなものか」または「どのような状態か」を説明し、文を成り立たせています。
完全自動詞と不完全自動詞
文型で SV と SVC に使われる動詞は目的語を必要としないので「自動詞」と呼ばれます。そして SV で使われる動詞は、補語さえも必要としないので「完全自動詞」といいます。SVC で使われる動詞は、補語が必要なので「不完全自動詞」です。
ただこの区別は単語ごとではありません。同じ単語でも使う文型が違えば役割が変わります。次の例文を見て下さい。
① This room smells.
この部屋はいやなニオイがする
② This flower smells sweet.
この花は甘い香りがする
③ I can smell gas.
ガスの臭いがする
①の文の「smell」は完全自動詞で「悪い臭いがする」という意味になりますが、どんな香りがするのかを補う必要(つまり補語が必要)ならば、②の文のように不完全自動詞としての「smell」になります。
また ③の文のように「smell」の後に何を嗅ぐのかという目的語を伴えば他動詞としての「smell」です。
「smell」の後は、②の文では形容詞、③の文では名詞がある点にも注意して下さい。目的語は名詞でなければなりませんが補語は形容詞でも構いません。
「名詞」または「形容詞」
SVC の文型で使われる動詞の例
SVC の文型で使われる述語動詞をある程度覚えておけば、その語を見たとき、文型の決定に役立ちます。
SVC の文型でよく使われる述語動詞を紹介していきます。
be 動詞
① His mother is an actress.
彼のお母さんは女優だ
② Life is short.
人生は短い
①の文では名詞「an actress」が、②の文では形容詞「short」が補語です。これらの補語は主語を説明しているので「主格補語」です。
be 動詞は補語に「名詞」でも「形容詞」でもおくことができます。
keep, remain「〜のままである」
① You must keep quiet.
静かにしなくてはいけない
② We could remain calm in a crisis.
我々は危機的状況でも平静を保った
SVC の文型で keep や remain を述語動詞に使う場合、主語が「ある状態を保持する」意味になります。ふつう状態を表すには「形容詞」や、それに準ずる「分詞」が使われます。
③ The door keeps closed.
ドアは閉まったままだ
③は分詞が補語になった例です。このように「closed」は、動詞「close(閉める)」の過去分詞と考えてもいいのですが、あまりにもよく使われるので、もはや品詞は「形容詞」となっています。
ところで ①から③の文で「keep」や「remain」を「be 動詞」に変えても文法的にヘンにならない点に注意して下さい。これが補語を含む文型を決定する手がかりになります。
SVC の文型で、述語動詞を「 be 動詞」に変えても文法的にヘンにならない
become, get「〜になる」
④ She became a teacher.
彼女は先生になった
⑤ She got married.
彼女は結婚した
「become」と「get」は、両方とも状態が変化して「〜になる」という意味で用います。ただし「get」は、この意味では名詞の直前に使えません。「get」の方が「become」よりもくだけた表現になります。
feel, smell, look, sound「〜の感じがする」
⑥ You look very nice in your dress.
服がよくお似合いですよ
この表現で補語になるのは、ふつう形容詞です。
seem「〜に思われる」
⑦ Tom seems ( to be ) happy.
トムは幸せそうだ
この意味で用いられる自動詞には、他に「appear」があります。「appear」は視覚的でより客観的な判断を示し「seem 」より硬い表現です。
「appear」で補語に名詞を使う場合には注意が必要です。見た目で「職業や地位」を判断する場合は「to be」を省略できません。ただし「評価」をいうのであれば省略できます。
⑧ He appeared to be a lawyer.
彼は弁護士のようだった
⑨ He appeared a good lawyer.
彼はよい弁護士のようだった
SVC の文型で S と C の関係
主格補語は主語がどうゆうものか、どういう状態かを説明しているので、「 S = C 」という関係が成り立っています。ですから述語動詞を「be 動詞」に変えても文型的にはヘンにならないのです。
① You must keep quiet.
→ You must be quiet.
② We could remain calm in a crisis.
→ We could be calm in a crisis.
③ The door keeps closed.
→ The door is closed.
④ She became a teacher.
→ She was a teacher.
⑤ She got married.
→ She was married.
⑥ You look very nice in your dress.
→ You are nice in your dress.
⑦ Tom seems ( to be ) happy.
→ Tom is happy.
⑨ He appeared a good lawyer.
→ He was a good lawyer.
SVOC の文型の中の補語
今度は SVOC の文型で使われる補語について見ていきましょう。
① The news made us happy.
その知らせは私たちを幸せにした
「The news」が主語、「made」が動詞、「us」が目的語、「happy」が補語です。
「happy」は、目的語である「us」がどのような状態にあるのかを説明してくれています。しかも補語である「happy」を省略したら、やはり文の意味が不明確になってしまいます。
目的語を説明する補語を「目的格補語」と呼びます。
・目的語を説明している
・目的格補語を省略すると文の意味が成り立たない
完全他動詞と不完全他動詞
文型で SVO と SVOO、そしてSVOC に使われる動詞は、どれも目的語を必要とするので「他動詞」と呼ばれますが、 SVO と SVOO で使われる動詞は補語を必要としないので「完全他動詞」といい、SVOC で使われる動詞は補語を必要とするので「不完全他動詞」と呼ばれます。
不完全他動詞としてよく使われる動詞もそれほど多くありません。これをあらかじめ知っておけば文型の決定、意味の読み取りに役立ちます。
SVOC の文型で使われる動詞の例
make, keep, leave「〜にする」
① The movie made him a star.
その映画が彼をスターにした
② I keep my room clean.
部屋をきれいにしている
③ I leave the door open.
ドアは開けとくよ
「keep」は努力して状態を保つのに対して「leave」は放ったらかしておく感じです。
call, name 「〜と呼ぶ」
④ Please call me Alessa.
アレサと呼んで下さい
find「〜と発見する」
⑤ I found the house empty.
家には誰もいなかった
SVOC の文型の中で O と C の関係
SVOC の文型の場合、O と C の間には「O = C」という関係が成り立ちます。ですから O を主格に変えて C の前に「be 動詞」を補えば意味のとおる文になります。先ほどの例文で確認しましょう。
① The movie made him a star.
→He was a star.
② I keep my room clean.
→ My room is clean.
③ I leave the door open.
→ The door is open.
④ Please call me Alessa.
→ I am Alessa.
⑤ I found the house empty.
→ The house was empty.
SVOC の文型の場合、Oの語を主格に変えてCの前に「be 動詞」を補うと意味のとおる文ができる
補語になれる品詞
補語になれる品詞は「名詞」または「形容詞」ですが、名詞の働きをする「不定詞」や「動名詞」、形容詞の働きをする「分詞」なども補語になる場合があります。
また名詞や形容詞の働きをする「句」や名詞の働きをする「節」が補語になることもあります。
ひとつひとつ確認しましょう。
名詞が補語になる
① People elected (as [to be] ) Mr. Saito chairman.
人びとは佐藤さんを議長に選んだ
①の文は SVOC の文型です。「Mr. Saito」が目的語(O)、「chairman」が補語(C)です。「chairman」は無冠詞なので注意して下さい。
形容詞が補語になる
形容詞は補語になりますが、しかし形容詞なら必ず補語になれるわけではありません。
形容詞には、名詞の前や後ろにつけて名詞を修飾する「限定用法」と、補語として用いられる「叙述用法」があります。
そして形容詞は ① 限定用法と叙述用法の両方で使えるもの、 ② 限定用法でしか使えないもの、③ 叙述用法でしか使えないもの、④ 限定用法と叙述用法で意味が変わるものがあります。
限定用法と叙述用法の両方で使える形容詞
①a His father looks young.
彼のお父さんは若く見える
①b He is a young father.
彼は若いお父さんだ
限定用法でしか使えない形容詞
② That’s the only asset.
それがたった一つの利点だ
「たったひとつの」という意味である形容詞としての「only」は限定用法でしか使えません。
only(唯一の、たったひとつの)
live(生きている)
mere(ほんの、単なる)
elder(歳上の)
main(おもな)
total(全部の) など
叙述用法でしか使えない形容詞
③ Are we alone in the universe ?
宇宙には私たちしかいないのか
「たったひとりだ」という意味である形容詞としての「alone」は叙述用法でしか使われません。
alive(生きて)
asleep(眠って)
afraid(恐れて)
awake(目覚めて)
aware(気づいて) など
限定用法と叙述用法で意味が変わる形容詞
同じ語でも限定用法と叙述用法で意味が変わる形容詞があります。
③ the late news 最近のニュース
He was late. 彼は遅れた
late(限定用法:最近の、叙述用法:遅れる)
present (限定用法:現在の、叙述用法:出席している)
right(限定用法:右の、叙述用法:正しい)
SVC の文型で補語が分詞
述語動詞が keep や remain などの場合は、分詞は動作や状態の継続を表します。
① He kept saying that he was innocent of the crime.
彼はその犯罪について無実だと言い続けた
② The curtains remain closed.
カーテンは閉めたままだ
①は「言い続けた」、②は「閉じられたまま」という、動作や状態の継続になっています。
SVCの文型では「 S = C 」の関係が成り立っているので、①と②の述語動詞を be動詞に変えてみても意味が通じるはずです。やってみましょう。
①’ He is saying that he was innocent of the crime.
②’ The curtains are closed.
これらの表現は、主語がどのような状態なのかを表しています。
SVOC の文型で補語が分詞
① The secretary kept me waiting in front of the room.
秘書は私を部屋の前で待たせた
② I found the room unlocked.
部屋の鍵が掛かっていないのを見つけた
SVOC の場合は、O と C の間に「 O = C 」の関係が成り立っているので、① は me を I に変えて be 動詞を補い 「I was waiting.」という文が作れますし、② は the room の後に be 動詞を補って「The room was unlocked.」という文が作れます。
現在分詞が能動の意味を、過去分詞が受動の意味を表しているのがわかります。
動名詞が補語になる
① My hobby is painting pictures.
私の趣味は絵を描くことだ
主語がどのようなものなのか、または、どのような状態なのかを説明するのが補語です。この文では「My hobby」が「painting pictures」であると説明しています。ですから「painting pictures」は補語です。
ところで be動詞の後ろに「〜ing」が続く場合は進行形の場合もあります。
I’m painting pictures.
絵を描いている
不定詞が補語になる
① My advice is to call the police.
警察に電話した方がいい
不定詞を使った名詞句も補語にできます。①の文では「to call the police」が主語の「My advice」の内容を説明しています。
句が補語になる
前置詞句
「前置詞句」も補語になることができます。ただし、これには議論があります。
前置詞句は形容詞的にも副詞的にも働きます。「be 動詞」は、ふつう不完全自動詞と判断しますが、完全自動詞と考える場合もあるようなので( I’m here など )、その場は前置詞句は副詞と考えるべきかもしれません。
① The hotel is under construction.
そのホテルは建設中だ
節が補語になる
「名詞節」は文の中で名詞の働きをする節です。名詞として働くので、主語や目的語になれる他に補語にもなれます。
① The problem is that we have very little time.
問題は時間がほとんどないことだ
② The question is whether he agrees with our plan.
問題は彼が我々の計画に賛成するかどうかだ
「that 節」や「whether 節」は補語になることができます。
「if 節(〜かどうか)」も名詞節を作りますが原則的には補語になれません。「if 節」は動詞の目的語になるのがふつうです。
実際に問題を解いてみよう
入試問題で「補語」についての知識が問われる問題には傾向があります。その特徴から受験勉強で必要な心構えを説明します。次の問題を見て下さい。
He remains ( ) despite his erudition.
① obscurity ② obscure
③ obscurely ④ obscuring
この問題を解くときのキーポイントは、述語動詞である「remain」と、その後ろの単語の品詞です。
remain は SVC の文型で使われる動詞だと気付けば動詞の後ろにくる語は補語となり「名詞」または「形容詞」だとわかります。
そして、この文の意味は「彼は博識にもかかわらず認められないままだ」となります。つまり「認められない」という状態のままだといいたいので「名詞」ではなく「形容詞」を選ぶのだろうと判断できます。「obscurity」は名詞ですが、その意味は、物事の「不明、難解さ」なので、文の意味から考えても選べません。
そのほか「obscurely」は副詞で「漫然と」の意味、「obscuring」は他動詞「obscure(見えなくさせる)」に ing がついたものです。
つまり、この問題の答えは形容詞である ②の「obscure(よく知られていない、無名の)」となります。
補語をテーマとする問題の具体的な対策は次のようになります。
① SVC の文型、SVOC の文型でよく使われる述語動詞を覚える。
② 単語を覚えるとき常に品詞を意識する。
このような問題は大学の入試問題で多く見られます。しかも、かなりの頻出問題です。それは、この問題が英語の大切なポイントを理解できいるかどうかを試すのに最適だからです。
・語順によって語の役割が変わる(主語、動詞、目的語、補語、修飾語など)
・語順によって使える品詞が決まる(名詞、動詞、形容詞、副詞など)
日頃の英語学習で留意するべきこと
日頃の英語学習で注意しておきたいのは単語の品詞です。
ふつう単語を暗記する場合、意味ばかり気にして品詞の区別がおろそかになってしまいます(生徒に単語を尋ねると品詞がごちゃごちゃになっているケースが本当に多いのです)。ですから派生語にも十分注意しなければなりません。英語は語順と品詞がとても重要なのです。