因数分解は得意ですか?
でもなぜ因数分解する必要があるのでしょうか?
因数分解して何か得するのでしょうか?
そんな素朴な質問に答えます。
目次
「因数」って何?
因数とは、整数や整式がいくつかの整数や整式の積の形で表されるとき、その構成要素です。具体的に見ていきましょう。
整数の因数
整数の場合、その数の因数とは約数と同じです。
例えば「12」の因数とは 「2」や「3」や「4」などですが、これらは「12の約数」という方が一般的です。
負の整数である「ー3」や「ー4」も、特に断りがなければ12の約数ですから因数です。「ー1」も因数です。
素因数とは因数の中で素数になるものです。
素数とは、2以上の自然数で、正の約数が1と自分自身だけになるものでしたね。
素数の積で「12」を表わすと次のようになります。
$12= 2 \times 2 \times 3 $
ですから「12」の素因数は「2」と「3」です。
正の整数を素因数の積で表わすのが素因数分解です。
しかし「1」や「12」はふつう因数とは呼ばないようです。呼ばないというのは「1」や「12」が因数ではないという意味ではなく、言う必要性が少ないという意味です。
「6は12の因数だ」と言うときはありますが「1は12の因数だ」とわざわざいう機会は少ないでしょう。同様に「12は12の因数だ」とはふつう言いません。しかし「1」や「12」は「12の約数だ」とは言います。
整式の因数
整式にも因数があります。
例えば整式 $3xy^2$ は次のような積で表されます。
$3xy^2=3 \times x \times y \times y $
したがって $3xy^2$ の因数は、掛け合わせている数字と文字式の組み合わせを考え次のようになります。
$3$, $x$, $y$,
$3x$, $3y$, $xy$, $y^2$,
$3xy$, $3y^2$, $xy^2$,
$3xy^2$
これらの数や文字式に負の符号(マイナス)が付いたものも因数ですが省略しました。「 $1$ 」も省略しました。
これらは因数とは呼びますがふつう約数とは言いません。
整式の場合もふつう「1」やそれ自身の整式も因数とは呼ばないでしょう。
共通因数をくくり出すって何?
多項式の場合、それぞれの項に同じ因数があれば、それをカッコの前に出すことができます。
$2x+2$
$=2\times{x}+2\times{1}$
$=2(x+1)$
これが共通因数のくくり出しです。因数分解などの計算で整数の共通因数をくくり出す場合、最大の共通因数でくくり出すのがふつうです。
因数分解って何?
因数分解とは、ひとつの整式を1次以上の整式の積の形にすることです。
積を作っている各整式が元の式の因数です。つまり共通因数が数だけの場合は因数分解とは言いません。
なぜ因数分解するの?
例えば次のような利点があります。
複雑な式が簡単に見える
整式は次数が多くなるほど扱いがむずかしくなります。次の2次方程式を考えましょう。
$x^2-3x+2=0$
この式の $x$ に実際に数値を代入して $0$ になる値を探し当てるのは手間がかかりそうです。しかし左辺を因数分解すれば次のように1次式どうしの掛け算になります。
$(x-1)(x-2)=0$
これならば方程式を見ただけで $x=1,2$ であると分かります。
むずかしい問題でも、それを構成する要素に分解すれば、案外やさしいと分かりますね。
式の性質や意味がわかる
次のような式を考えます。
$x^2+3x+2$
さて、この整式の $x$ に整数が入るとすると、この整式の値は奇数でしょうか?それとも偶数でしょうか?
次のように因数分解してみましょう。
$x^2+3x+2$
$=(x+1)(x+2)$
$x+1$ と $x+2$ は、$x$ が整数なら隣り合うふたつの整数を表しています。
隣合うふたつの整数の片方は必ず偶数なので、上記の整式に整数を代入した場合、その値は必ず偶数になります。
このように式が因数分解できれば、その式の性質を知ることができる場合があります。
因数分解に手順はある?
因数分解には必ずふむべき手順があります。その手順どおりに行わないと、わからなくなったり因分解に失敗するときがあります。
共通因数のくくり出し
因数分解をする場合、いちばん最初の手順は共通因数のくくり出しです。
例えば、次のような整式を因数分解するときは共通因数である4を最初にくくり出し、そのあと残りの整式が因数分解可能なら続けて因数分解します。
$4x^2-36y^2$
$=4(x^2-9y^2)$
$=4\{x^2-(3y)^2\}$
$=4(x-3y)(x+3y)$
共通因数のくくり出しを後回しにすると途中で因数分解が終了したような誤解が生じやすくなります。
$4x^2-36y^2$
$=(2x)^2-(6y)^2$
$=(2x-6y)(2x+6y)$
まだ終わりじゃない!
$=4(x-3y)(x+3y)$
共通因数のくくり出しは、いちばん最初に行うと覚えておいた方がいいでしょう。
文字式の次数に着目
次数が最低になる文字について整理する
文字式は次数が低いほど扱いやすくなります。複数の種類の文字を含む式は、文字の種類ごとに次数を調べ、もっとも次数が少ない文字について整理してみましょう。
次の式では $a$ については1次式であり、 $b$ については2次式なので $a$ について整理します。
$2b^2+ab-3a-3b-9$
$=(b-3)a+2b^2-3b-9$
$=(b-3)a+(b-3)(2b+3)$
$=(b-3)(a+2b+3)$
このように因数分解できます。
ひとつの文字について整理
もし、どの文字についても同じ次数であれば、どれかひとつの文字について整理します。
$2x^2+7xy+3y^2+5x+10y+3$
この式は $x$,$y$ どちらについても2次式です。$x$ について整理してみます。
$=2x^2+(7y+5)x$
$+(3y^2+10y+3)$
ここで $3y^2+10y+3$ を因数分解します。たすき掛けを使います。
$=2x^2+(7y+5)x$
$+(3y+1)(y+3)$
そして更に全体を $x$ について因数分解します。やはりたすき掛けを使います。
$=\{2x+(y+3)\}\{x+(3y+1)\}$
$=(2x+y+3)(x+3y+1)$
同じ形のものは置き換え
次のような式を考えてください。
$(x+1)^2-2(x+1)-15$
カッコがあると、つい展開したくなりますが、よく観察すると次のように置き換えができます。
$(x+1)^2-2(x+1)-15$
$X=x+1$とおく
$=X^2-2X-15$
$=(X-5)(X+3)$
$=\{(x+1)-5\}\{(x+1)+3\}$
$=(x-4)(x+4)$
最後まで因数分解する
因数分解した後カッコ内の式がまだ因数分解できる場合があります。特に断りがなければ係数が有理数の範囲内で可能な限り因数分解しなければなりません。
$x^4-81$
$=(x^2+9)(x^2-9)$ まだ途中!
$=(x^2+9)(x+3)(x-3)$
まとめ
因数分解にはいろいろなテクニックがありますが、それらを習得する以前に知っておくべき内容や基礎的な手順があります。それを疎かにしたばかりに思わぬところで因数分解に失敗してしまいます。今回はそのような因数分解の基礎の基礎をまとめました。