【正五角形】黄金比を利用できるようになろう

五角形には、人間がもっとも美しいと感じる比である「黄金比」が隠れています。

黄金比とは、約「1対1.6」の比のことをいいます。

身近な例では、名刺やクレジットカードの縦横や見慣れた企業のロゴにも黄金比が使われていています。アップルコンピュータのマークやグーグルのロゴにも黄金比が発見できるそうです。

建造物や美術品、デザインの世界では当たり前の「黄金比」ですが、数学の世界でも、黄金比は、魅力的な性質にあふれています。

そのため大学の入試問題にも登場しますし、小学校や中学校で学ぶ「相似」にさえ、その面影が現れます。

数学的な黄金比を実感できる図形のひとつが正五角形です。正五角形の図形的な性質を知っておけば、しばしば入試問題で登場する黄金比を含んだ問題にも慌てないで対応できるようになるでしょう。

正五角形の角度

最初に正五角形の中に現れる角度に注目します。まず正五角形の内角を求めてみましょう。

正五角形の内角

内角」とは多角形の内側にある、となり合う辺と辺とが作り出す角度のことです。

正多角形の場合、すべての内角は同じ値ですね。これを利用して正五角形の内角をもとめます。

対角線を引いて五角形を3つの三角形に分割します。

三角形の内角の和は180度と知られているので、五角形の内角の和は、その3倍の540度となります。正五角形の場合、すべての内角の大きさは同じですから、ひとつの内角は108度です。

正五角形の中に現れる二等辺三角形

正五角形の各辺の長さは同じです。ですから三角形ABEは二等辺三角形ですね。

ではこの二等辺三角形の底角の大きさをもとめましょう。

三角形の内角の和は180度なので180度から頂角の108度を引いて2で割れば底角の大きさが求まります。底角の大きさは36度です。

五角形の中の合同な二等辺三角形

次に正五角形の対角線のすべてを引いてみましょう。

すると先程の二等辺三角形と合同な二等辺三角形をたくさん見つけることができます。次の図で示された三角形はすべて合同です。中学校で学ぶ三角形の合同条件では「2辺とはさむ角がそれぞれ等しい」から、となります。

これを利用すると次のように辺と対角線でできる複数の角度の大きさが求まっていきます。

36度の角度がたくさん見つかりました。これを利用すると、さっきの二等辺三角形と合同な三角形は他にも見つかりますね。三角形の合同条件の「1辺と両端の角がそれぞれ等しい」を使いましょう。

相似な二等辺三角形

合同な二等辺三角形がたくさん見つかりましたが、この二等辺三角形と相似な二等辺三角形も発見できます。下の図の二等辺三角形がそうです。相似条件は「ふたつの角度がそれぞれ等しい」が成り立っています。

別なかたちの二等辺三角形

別のかたちの二等辺三角形も正五角形の中に発見できます。

そしてこのかたちの相似の二等辺三角形もたくさんあります。

まだありますよ。

まとめると、かたちで2種類、大きさはそれぞれ2種類と3種類の二等辺三角形がひとつの正五角形の中に含まれているとわかります。

三角形ばかりではありません。ひし形や等脚台形も正五角形の中に見つけることができます。

正五角形に含まれるひし形

正五角形に含まれる等脚台形

もとの正五角形と相似な正五角形

そして中心にある五角形は、辺の長さが等しく内角も等しくなるので、もとの正五角形と相似な正五角形です。

このように正五角形の中には合同や相似の多数の図形を見つけられます。

正五角形の中にある図形の辺の長さ

今度は辺の長さに着目しましょう。

正五角形の1辺の長さを「1」とします。

先程に登場した2種類の二等辺三角形が組み合わさった二等辺三角形ACDに着目します。

見やすくするために、この二等辺三角形だけを抜き出してみましょう。2種類の二等辺三角形が組み合わさっている点に注意して下さい。

辺CDの長さを x として、この長さを求めます。二等辺三角形ACDと二等辺三形DJCは相似なので、それをわかりやすく抜き出して描き直します。

比の計算をして x を求めます。

これで正五角形の対角線の長さが求まりました。

実はこれが「黄金比」なのです。

正五角形に現れるもっとも大切な性質です。これは覚えておくと役に立ちます。

正五角形の性質
正五角形の辺と対角線の比は「黄金比」である

正五角形の1辺と対角線の比が黄金比であるとあらかじめ知っていれば、分度器を使わずにコンパスと定規で正五角形の作図ができます。

正五角形の作図

正五角形の辺と対角線が黄金比であることを利用して正五角形を作図してみましょう。

① 線分AB をひき、この長さを1とします。

② 線分AB の垂直二等分線をひきます。線分AB の中点をM とします。

③ 垂直二等分線上の点P を、線分PMの長さが線分AM の長さ(すなわち1)と同じになるようにとります。

④ 半直線AP をひきます。

さて、このときの線分AP の長さに着目して下さい。三平方の定理を使って計算してみましょう。

このことを覚えていて下さい。

⑤ 次に半直線AP上に点Q を、線分PQ の長さが線分AM の長さ(すなわち2分の1)と同じになるようにとります。

すると線分AP の長さが次の図のようになりますね。

この値は見覚えがありますね。そうです、「黄金比」の値です。

⑥ 垂直二等分線上の点R を、線分AR の長さが線分AQの長さと同じになるようにとります。

ここまできたらあとは簡単です。線分BR をひきます。

線分AR と線分BR は1辺を1とする正五角形の対角線となっているはずです。あとは線分AR と線分BR を底辺とする、等辺が1の二等辺三角形を描けば正五角形の頂点S、頂点T が求まります。

これで正五角形が描けました。

正五角形の三角比への応用

正五角形に含まれている二等辺三角形を利用すれば角度が36度や18度の三角比の値を求めることもできます。黄金比を含む2種類の二等辺三角形に着目しましょう。

この二等辺三角形を抜き出して考えます。正五角形の辺と対角線は黄金比であることを利用します。

このようにすれば36度や18度の三角比を求められます。

まとめ

正五角形には魅力的な図形の性質が多く含まれています。これを知っておくと、思いがけない図形の問題にも応用できるかもしれません。知っておいて損はありませんよ。