2022年度の問題の解法を説明しながら「大学入学共通テスト」における数学の攻略方法を説明していきます。
目次
第2問
〔1〕連立する2次方程式
次のふたつの2次方程式を考えます。

$p$ と $q$ は実数です。
⑴ 連立する2次方程式の解の個数を調べる
この問題を解こうとしたとき「判別式」だけで考えようとはしませんでしたか?解の個数をたずねているので「判別式」を思い出すのは正しいのですが、この問題ではもう少し考察が必要です。
問題文にある「①または②を満たす実数 $x$ の個数を $n$ とおく」に注意して下さい。ここが正確に読み取れていなければ正しい答えが得られません。
$n$ の最小値は $0$ で 最大値は $4$ ですが、場合によって $n$ は $1$ や $2$ や $3$ になります。そして、それがそれぞれどのような場合なのか、あらかじめ想像できなければなりません。すると判別式だけでは不十分だと気付きます。
①と②に $p=4,$ $q=-4$ を代入します。

それぞれの方程式を解きます。

この答えは判別式で考えても正解になるかもしれませんが、次はそうはいきません。
今度は①と②に $p=1,$ $q=-2$ を代入します。

それぞれの方程式を解きます。

これを判別式のみで解こうとすれば間違えてしまうでしょう。この問題は、ある意味では「ひっかけ」ですが、それに気づくポイントが用意されています。実はそれは次の⑵の問題を解くときに得られるのです。
⑵の問題文に花子さんと太郎さんの会話がありますが、その中に「実際に $n=3$ となっているかどうかの確認が必要だね」とありますね。これを読んだとき、⑴が正しく解けているかを再考できるチャンスが与えられているように感じます。
⑵ 解の個数から連立する2次方程式を定める
わたしの印象ですが共通テストの問題はとても親切です。どうにかして解いてほしいというヒントや注意喚起がそこかしこに読み取れます。それに気づくかどうかで共通テストの難易度の印象が大幅に変わってきます。
花子さんと太郎さんの会話文のとおりに解いていきましょう。
①と②に $p=-6$ を代入します。

①と②の共通の解を $\alpha$ とし 次のように ${\alpha}^2$ を消去します。


$q=-6$ にすると①と②の式がまったく同じになってしまうので $n=3$ にはなりません。
$\alpha=1$ を①または②に代入して$q$ を求めます。

この $q$ の値を①と②に代入し、それぞれを解きます。

次に $q=5$ 以外で $n=3$ になる場合を考えます。
$p=-6$ のとき②は判別式から必ず異なる2つの実数解が得られます。

このことから①の式の解が重解で、その甲斐が②の解と異なれば $n=3$ となります。

本当は $q=9$ を①と②に代入して改めて解を求めるべきですが省略します。以上より $q$ が求まります。

⑶ 2次関数のグラフ
共通テストではおなじみのグラフ表示ソフトの問題です。
2次関数グラフの移動は、頂点の移動に着目しましょう。
$p=-6$ に固定します。③と④のそれぞれの放物線の頂点をもとめます。
最初に③の頂点です。

この頂点の座標に着目すると $q$ の値によって $x$ 座標は変わらず、$y$ 座標だけが変化することが読み取れます。
実際の $q$ の値を入れてグラフを描いてみます。$q=1$ と$q=4$ です。③の頂点はそれぞれ次のようになります。

これを使ってグラフを描いてみます。

これを見ると③のグラフの移動がわかります。
次に④のグラフの頂点を求めます。

実際の $q$ の値を入れてグラフを描いてみます。$q=1$ と$q=4$ です。④の頂点はそれぞれ次のようになります。

これを使ってグラフを描いてみます。

これを見ると④のグラフの移動がわかります。
③ のグラフの移動の様子を示すと「オ•••⑥」となり, ④ のグラフの移動の様子を示すと「カ•••①」となる。
⑷ 2次不等式と集合と命題
集合から必要条件、十分条件を判定する問題です。

$A$ と $B$ のそれぞれの集合は、⑵で使った2次関数の式を不等式に直したものであると気付きましょう。
共通テストでは、大問の中の小問は、直前の小問をヒントとして使ったり応用であったりします。この問題も式が似通っていることから ⑵ をどのように利用すればいいのかを考えます。
⑵ では $q=1$ から始めてグラフがどのように移動するのかを求めたのでした。今回 $q$ の範囲を見ると、$q=1$ から $q=9$ までとなっています。
$q=1$ のときの③と④のグラフを描くと次のようになります。

そして ⑵ より$q$ を増加させていくと、どのように移動するのかを矢印で示します。

少しだけ動かしてみましょう。

このグラフをもとにして集合 $A$ と $B$ を $x$ 軸上に表します。不等号の向きに注意してください。

これより次の答えが得られます。


このように ⑷ の解答を得るために ⑶ の考察が利用できます。
〔2〕データの分析
⑴ ヒストグラムの読み取り
データを値の大きさの順に並べたとき、中央の位置にくる値を中央値といいます。
今回のデータは、29カ国中の「教員1人あたりの学習者数」ですからデータの総数は29個なので、少ない人数から(または多い人数から)数えていって14番目のデータが中央値です。それを2009年度のヒストグラムと2018年のヒストグラムで具体的に数えていきます。
すると、それぞれの中央値は、2009年度では30人以上45人未満の階級にあり、2018年度も30人以上45人未満の階級にあるのがわかります。
2009年度と2018年度の中央値が含まれる階級の階級値を比較すると, 両者は等しい ・・・・ケ
データを値の大きさの順に並べたとき, 4等分する値を四分位数といいます。そして小さい方から順に第1四分位数、第2四分位数、第3四分位数といいます。第2四分位数は中央値と同じです。
今回のデータの数は29個なので、中央値を境にして中央値を含めずに下の組と上の組に分けます。それぞれデータの数は14個となります。そして下の組の中央値が第1四分位数です。ですから少ない人数から7番目と8番目の間に第1四分位数があります。
それぞれの第1四分位数は、2009年度では15人以上30人未満の階級にあり、2018年度も15人以上30人未満の階級にあるのがわかります。
2009年度と2018年度の第1四分位数が含まれる階級の階級値を比較すると, 両者は等しい ・・・・コ
また第3四分位数は多い人数から7番目と8番目の間にあります。
それぞれの第3四分位数は、2009年度では60人以上75人未満の階級にあり、2018年度は45人以上60人未満の階級にあるのがわかります。
2009年度と2018年度の第3四分位数が含まれる階級の階級値を比較すると, 2018年度の方が小さい ・・・・サ
データの最大値から最小値を引いた差をデータの範囲といいます。ヒストグラムでは、具体的な最大値と最小値はわかりませんが、全体のデータの散らばり具合からデータの範囲を推定することはできます。
2009年度のデータの最大値と最小値は、それぞれ165人以上180人未満の階級と15人以上30人未満の階級にあります。
2018年度のデータの最大値と最小値は、それぞれ120人以上135人未満の階級と0人以上15人未満の階級にあります。
2009年度と2018年のヒストグラムでは、明らかに2018年の方が散らばり具合の方が小さいとわかります。
2009年度と2018年度の範囲を比較すると, 2018年度の方が小さい ・・・・シ
四分位範囲とは第3四分位数から第1四分位数を引いた差のことです。
第1四分位数と第3四分位数が含まれる階級はわかりますが、それぞれの具体値まではわかりません。今回それぞれの値の含まれる階級は一致してしまうので、これ以上には求められません。
2009 年度と2018年度の四分位範囲を比較すると, これら二つのヒストグラムからだけでは両者の大小を判断できない ・・・・ス
⑵ 箱ヒゲ図
箱ヒゲ図では最小値、最大値、中央値、第1四分位数、第3四分位数の具体値がそれぞれ読み取れます。
またヒストグラムでは各階級に含まれるデータの数が読み取れます。
今回の場合、散布図の各点はひとつひとつのデータそのものです。すなわち、ひとつひとつのデータの値が読み取れます。
これらの特徴を考えて散布図を選びます。
問題として箱ヒゲ図が与えられているので、最小値、最大値、中央値を与える散布図中の具体的な点を探します。今回は第1四分位数と第3四分位数は使えません。なぜなら、その値の出し方は、今回の場合、ふたつのデータを足して2で割った値だからです。散布図中の特定の点のデータではありません。
箱ヒゲ図から最大値は480人ぐらいと読み取れます。すると①の散布図は最大値が430人ぐらいしかないので消去できます。
また箱ヒゲ図から中央値は145人ぐらいです。
各散布図で中央値を見つけます。すなわち多い方から点を数えて15番目の点です。すると③の散布図は中央値が150人より大きな値になるので消去します。
これで箱ヒゲ図から読み取れる値は使ってしまいました。その代わりに使えるのはヒストグラムです。
ヒストグラムは各階級に含まれるデータの数は正確に読み取れます。その点に着目して点を数えましょう。
実は今回は、⓪の散布図の点は全部で28点しかありません。それを理由として消去できます。
箱ヒゲ図、ヒストグラム、散布図の特徴を知っていれば、それを着眼点にして正しい答えが得られます。
2009年度について、「教育機関1機関あたりの学習者数」(横軸)と「教員1人あたりの学習者数」(縦軸)の散布図は「セ•••②」である。
⑶相関係数
相関係数を求める問題です。相関係数の定義は次のとおりです。

与えられている数値を使って計算しましょう。

⑷ 散布図
相関係数 $r$ は $-1\leqq r \leqq 1$ の値をとります。そして相関係数の値は、正の相関が強いほど $1$ に近づき、負の相関が強いほど $-1$ に近づきます。
今回の相関係数 $0.63$ は $1$ に近いので正の相関が強いと判断できます。
与えられている散布図より、正の相関がはっきり読み取れるのは ① と ③ です。また表1より S と T の平均値を散布図に直線として描き込みます。その交点を中心にしてデータの点が広がるはずです。つまり点の集まりの中心に近くだと判断できます。それから考えてツの答えは③となります。
⑶ で算出した2009年度の $S$(横軸)と $T$(縦軸)の散布図は「ツ•••③」である。
まとめ
第2問〔1〕はふたつの2次方程式の解の個数についての問題でした。
細かい点ですが「①または②を満たす実数解」の「または」をしっかり認識しないといけません。
⑴ で具体値を使って試させています。共通解が解の個数に影響すると分かれせています。それが ⑵ を解くためのキーポイントになっています。
⑶ ではグラフ表示ソフトでグラフの動きを考えています。
もし ⑵ の最後の問題が上手くできなかったら、⑶ に進んだとき「グラフで考える」方法が示されているので、それを使って再チャレンジできるかもしれません。
このように共通テストでは考えるチャンスが複数与えらています。それらに敏感になれば共通テストに対する難易度の印象が変わってくるでしょう。
⑶ の問題は具体的な数値を代入すれば動き方はわかります。そしてその動きが ⑷ を解くためのヒントになっているのです。
このように共通テストの問題は、複数の問題がバラバラにあるのではなく、有機的に結びついています。それがどのように結びついているのかを考えられるようになりましょう。
第2問〔2〕はヒストグラムや箱ひげ図、散布図の特徴、中央値、階級値、四分位数、範囲、相関係数などを正確に知っているかどうかを試しています。
ただし、それだけではなく、例えばヒストグラムと中央値の関係や、散布図と箱ひげ図の関係など、それぞれの特徴の関連性が理解できているかが、この問題を解くためのキーポイントです。
共通テストには問題を解くための流れがあります。その流れに上手に乗れば、共通テストの問題は決してむずかしくはありません。
流れを知るには出題者がどのように解かせたいのかを読み取る必要があります。その意味ではまるで国語の読解問題のようです。自分勝手に解こうとすると効率がわるくなり上手くいきません。その特徴を知って共通テスト対策をして下さい。