2022年度の問題の解法を説明しながら「大学入学共通テスト」における数学の攻略方法を説明していきます。
ここでは問題そのものは掲載していません。解答のみですので予めご了承ください。
目次
第1問
〔1〕展開公式の利用
⑴ 展開公式の利用
基本問題ですね。
次の式の値が与えられていて

次の式の値を求めるものです。

問題文にあるとおり次の展開公式を使います。

これに①と②を代入します。

そのあと問題文に「であることがわかる。よって」とある点に着目してください。もちろんこれは「これまでに現れた式の値を利用して次の式の値を求めなさい」という意味ですね。
これまでに現れた式をまとめると次のようになります。

そして求めたい値は次の式です。

この式は項が横に並んでいますが縦に並べてそれぞれの項を展開しましょう。すると同じかたちの式が縦に並ぶので見やすくなります。

これは、とても小さな工夫に思うかもしれませんが、計算を見やすく行うためにはとても有効な手段です。
横に長くなる式は必要に応じて縦に並べて計算する
(2)展開公式の利用
問題文のとおりに進めていきましょう。与えられている条件は次の式です。

これらより $x+y$ の値を求めます。これも縦に式を並べて視線を上下に動かせば容易に求められます。

問題文に「また, ⑴の計算から」とあるので次の式を利用します。

どのように使うのかというと問題文に示されている次の式の値

を上記の式に代入すればいいのです。

そして問題文の「これらより」に従うのですが、どのように従ったらいいのでしょうか。
ここで考えてほしいのは「なぜ $a, b, c$ をわざわざ $x, y$ においたのか」という点です。それには理由があるはずです。ですから次の式も「 $x,y$ にする必要がある」と考えましょう。

この式を見るとあとは $xy$ の値さえわかればいいのですね。では、それはどのようにすれば得られるのでしょうか。
ここまでで $x, y $ という文字でできた式は次のふたつの式です。

このふたつの式を見て何か思い出しませんか?そうですね、次の展開公式を使いましょう。

これより $xy$ の値がわかります。

答えは次のようになります。

〔2〕三角比の基本
三角比の基本問題です。水平方向と鉛直方向の縮尺がちがう地図があり、その考察から実際にキャンプ場から山頂を見上げたときの角度を求める問題です。
問題文にある $16^\circ$ は地図上で測った角度です。地図上での山頂の位置を $B’$ とします。

図の縮尺は水平方向と鉛直方向で違っているので、この縮尺を同じにしなければなりません。そのためには縦の縮尺を4分の1倍にすればいいのですね。

実際のキャンプ上から山頂を見上げた角度を $\theta$ とします。

これより次の計算が成り立ちます。

この結果より $\angle BAC$ の大きさは三角比の表より

となります。
〔3〕正弦定理と2次関数
⑴ 正弦定理の利用
図を描きましょう。

「三角形」「外接円」「サイン」というキーワードより「正弦定理」を思い出しましょう。

これに与えられた数値を代入します。

直角三角形 $\small{ABD}$ に三角比を適応させます。

(2)2次関数の利用
問題文にある次の式

は辺 $\small{AC}$ の長さを辺 $\small{AB}$ の長さで表せることを意味しています。
一般的に問題の中に等式が与えられている場合「文字を減らせる」という意味がある

さて、$\small{AB}$ のとり得る範囲の求め方ですが、「三角形の辺の長さ」と「不等式」というキーワードより、次の公式を思い出しましょう。
正の整数 $a, b, c$ を3辺とする三角形が存在する条件は、次の式が成り立つことである。
$$|b-c|<a<b+c$$
では、この式をどの三角形に適応させるかですが、答えの「ト」と「ナ」は文字ではなく数値であると考えれば、辺 $\small{AB}$ を含み残りの2辺が数値として与えられている三角形が候補となります。
そこで、ここまでではっきりした数値として使えるのは、外接円の半径3しかありませんから(問題 ⑴の数値は使えないことに注意して下さい)、外接円の中心を $\small {O}$ とすれば次の図で赤く示した $\triangle \small{OAB}$ が使えそうです。

$\triangle \small{OAB}$ に三角形の条件式を適応させると次の不等式が得られます。

ところで今回は三角形を作る必要はなく辺 $\small{AB}$ の長さの条件さえ求めれば良いので不等式に等号を含めても構いません。$\small{AB}$ を直径とする外接円でもいいからです。

今度は $\triangle\small{OAC}$ に目をつけて下さい。

さっきと同様に考えて次の式が得られます。

そして $\small{AC}$ を $\small{AB}$ で表し $\small{AB}$ について解きます。

これらをまとめると次の式になります。

次に $\small{AD}$ の長さを $\small{AB}$ で表します。
このとき ⑴の解法を思い出しましょう。⑴では $\small{AB}$ と $\small{AC}$ の具体的な長さが与えられていて $\small{AD}$ の長さを求めるものでした。
今回 $\small{AB}$ はわかったものとして扱います。 $\small{AC}$ は 次の等式により

$\small{AB}$ で表せます。つまり解法としては⑴と全く同じでよいのです。
では先ず$\rm sin \angle \small{ABC}$ を$\small{AB}$ で表しましょう。⑴と同様に正弦定理を使います。

⑴と同様、直角三角形 $\small{ABD}$ に三角比を適応させます。

$\small{AD}$ の最大値を求めます。わかりやすいように $\small{AB}$ を ${x}$、$\small{AD}$ を ${y}$ としてみましょう。すると次のようになります。

この式の ${y}$ の最大値を求めればいいのです。グラフが描けばいいのですね。では平方完成して頂点を求めましょう。

${x}$ の範囲に注意してグラフを描きます。

これを見れば ${x}=4$ のとき ${y}$ が最大値だとわかります。

まとめ
問題文にある「よって」や「これらより」「このとき」などの言葉に敏感になりましょう。それらには出題者がどのように解いてほしいのかが暗に示されています。自分の解き方を考えるのではなく出題者の解き方を察するのが共通テストを攻略するコツのひとつです。